パニック障害
パニック障害
最近パニック障害の患者さんの受診がふえています.
以前は「全般性不安障害」とか「不安神経症」という病名がつけられ, 神経症の一部として治療されていた疾患ですが,
最近は身体的疾患と認識され適切な薬物療法と行動療法が有効であると報告されています.
【疾患概念】
突然, 耐えがたいほど強烈な不安に襲われ, 以下に示すようなパニック発作を起こす.
1. 動悸, 心悸亢進, 心拍数の増加
2. 発汗
3. 身震い
4. 息切れ感, 息苦しさ
5. 窒息感
6. 胸痛, 胸部不快感
7. 吐き気, 腹部不快感
8. めまい感, 気が遠くなる感じ
9. 死ぬことに対する恐怖
10. その他自律神経失調発作
救急受診して検査を受け, 「何ともない」と帰されるが, 何度か発作を経験するうちに
特定の場所や状況を恐れるようになり
(通常自由がきかない, すぐに医療機関を受診できない状況, たとえば渋滞した高速道路, 会議, エレベータ, 長時間停車しない電車など), 生活範囲が狭まる.
さらに「また自分の身に何かおこるのではないか」という予期不安を抱えるため,
抑うつ気分が出現する. ひどくなると, 家から一歩も外出できない状態に陥る.
ある程度の心理的ストレスが関与する可能性もあるが,
約40%の症例には何のストレス源も見当たらないため, 生物学的要因が重要とされている
【治 療】
基本的に薬物療法です.
もちろんストレス源が明らかな場合は, それを排除するようカウンセリングしますが,
まず予期不安をコントロールすることが重要だと考えます.
なぜなら予期不安は新たなパニック発作を誘発する温床となるからです.
ほとんどのベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZP)や抗うつ剤が有効であるとされていますが, 短期作用型高力価型BZPは耐性, 依存性が生じやすいため,
当院では中長期作用型のBZPとスルピリドを使用します.
予期不安がある程度解消された後, 行動療法を開始します.
これまで恐れていた状況に少しずつチャレンジしてもらうのです.
系統的脱感作療法のメニューを作るため,
初診時に生活上困っている状況を5点程度リストアップしてもらいます.
ここで注意しなければいけないのは「早く克服しなければならない」と焦ってはいけないことです.
行動療法中に再発作を起こすと, また一から. 当院では短時間作用型BZPをあらかじめ服用してもらった上で行動療法を始めます.
基本的に治療開始後, 2週間は薬物療法のみ, その後予期不安のコントロールぶりをみながら行動療法を併用していきます. 治療のメドは3ヶ月です.
【予 後】
症例によって改善の程度は異なりますが,
ほぼ半数の症例は2週間以内に良好なコントロールが得られるようになります.
治療開始が遅れたケースほど長引く傾向にあるようです.
早めに専門機関受診をお勧めします.