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和歌山市の心療内科・精神科クリニック。吉田メンタルクリニックです。

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精神科のお薬のおはなし

精神に作用する物質


世間ではでは「精神科で出される薬をのむとボケる,クセになる」という
誤ったイメージを持たれている方も多いようです。

確かに昔は依存性のある強力な(効きすぎてフラフラする)薬が処方されたこともありました。

しかし、現在一般に処方されている向精神薬は安全性が検討されており、 服薬方法さえ間違わなければ「怖い」ものではありません。

ここでは精神に作用する物質に関する一般的情報についてお知らせします。
 

【向精神薬の分類】

向精神薬?抗精神病薬?

向精神薬と抗精神病薬は同じではありません。

向精神薬とは 中枢神経に働きかけ精神に何かしらの作用をもたらすお薬の総称です。
その中に 抗精神病薬や 抗うつ薬 抗不安薬などが含まれます。


向精神薬は使用目的に応じて, 下のように分類されています。

a)抗精神病薬(メジャートランキライザー) : 精神分裂病治療用
b)抗うつ薬 : うつ病治療用
c)抗そう薬 : そう病治療用
d)抗不安薬(マイナートランキライザー) : 神経症圏障害治療用

抗不安作用をもつ薬剤のうち鎮静効果が高いものは睡眠薬として使用され, 低いものが安定剤として処方されます。

よく「このクスリは睡眠薬ですか. 眠剤だったらクセになるんじゃないですか?」と質問されますが
クスリの化学構造は基本的に睡眠薬も安定剤も同じなのです。

また各ジャンルのクスリは病気の状態に応じて、本来の使用目的以外に処方されることがよくあります。
その例を下に示します。

抗精神病薬(特にハロペリドール)
a)痴呆患者の不眠,夜間徘徊や不穏行動
b)アルコール症患者のせんもう状態
c)知的障害児(者),衝動性人格障害患者の挿話性暴力的衝動行為
d)抗そう剤でも行動にコントロールが不十分なそう状態
e)解離性障害が重度で正常会話が成立しない,あるいは自殺企図がみられる場合

抗うつ薬
パニック障害、摂食障害、遺尿症(イミプラミン)、不安症状

抗不安薬
抗うつ効果の認められる一部の薬剤は神経症性抑うつ状態、心的外傷後抑うつ状態にも使用されます。
勿論 精神病患者の不眠に対しても繁用されています。


抗てんかん剤

a)抗そう剤でも行動にコントロールが不十分なそう状態
b)知的障害児(者), 衝動性人格障害患者の挿話性暴力的衝動行為
c)激越性うつ病
 


【抗不安薬について】
非精神病の患者さんに対して最も多く処方されているクスリが抗不安剤です。

一般に「安定剤」と呼ばれているものです。 最近の抗不安剤は ほとんどがベンゾジアゼピン系と言われる薬物(BZP)です。
そこで次の項目ではBZPについてご説明します。


同時に催眠鎮静剤にも分類されるものもあります。
一般的に低用量で鎮静効果,中用量で抗不安効果を、 高用量で催眠効果をもたらします。
中等量かつ短期間に使用する場合は耐性、 依存性、 離脱が出現することはまずありません。
しかし半減期の短いベンゾジアゼピンを突然中止すると重篤な離脱症状を起こすことがありますので注意が必要です。

適応は不安状態や 不眠、 うつ病(アルプラゾラム)、 パニック障害などとなります。
現在日本で主に使用されているBZPを下に示します.


抗不安効果があるBZP
短期作用型
         高力価型 : エチゾラム(デパス)
         低力価型 : クロチアゼパム(リーゼ)
中期作用型
         高力価型 : ロラゼパム(ワイパックス) アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)
         中力価型 : ブロマゼパム(レキソタン)
         低力価型 : オキサゼパム(ハイロング)
長期作用型
         高力価型 : フルジアゼパム(エリスパン)
         中力価型 : ジアゼパム(セルシン)
         低力価型 : クロルジアゼポキシド(コントール) メダゼパム(レスミット)
超長期作用型
         高力価型 : フロトプラゼパム(レスタス) ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)
         低力価型 : プラゼパム(セダプラン)
催眠,鎮静効果があるBZP
         超短期作用型 : トリアゾラム(ハルシオン)
         短期作用型 : ブロチゾラム(レンドルミン) 塩酸リルマザホン(リスミー)
         中期作用型 : フルニトラゼパム(ロヒプノール) エスタゾラム(ユーロジン) ニトラゼパム(ベンザリン)
         長期作用型 : フルラゼパム(ダルメート)


 
【抗うつ剤について】
次に抗うつ剤について説明します。

抗うつ剤は三環系、 四環系、 非定型、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、
セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA)に分類されます。

三環系抗うつ剤はその分子構造(環状構造)が3つあり、四環系とは、薬剤の分子構造中に連なった環状構造が4つあることに由来してついた名前です。

三環系抗うつ剤は側鎖の窒素原子に2つあるいは1つのメチル基を持ち、各々3級、2級アミンと呼ばれます。

日本では3級アミン三環系抗うつ剤処方が多いようです。 
3級アミン三環系抗うつ剤では鎮静 起立性低血圧 口渇 便秘 かすみ目などの抗コリン作用性副作用が多くみられます。
四環系抗うつ剤は三環系抗うつ剤に比べて抗うつ効果は劣るものの 抗コリン作用性副作用が少なく高齢者にも使いやすいものです。

緑内障, 前立腺肥大症を持つ患者には原則使用禁忌です。

三環系抗うつ剤は鎮静の副作用がある一方、
症例によっては興奮を惹起する場合があるため 夕食後は服用しない方が無難であるといわれます。

日本では副作用の発現をおそれるあまり 抗うつ剤の処方量が少なすぎて 抗うつ効果が不十分になる症例がかなりあります。

三環系, 四環系抗うつ剤共に効果の発現はかなり遅く、
初回投与後1~2週間(時には1カ月)を経過してから効果を現す症例がかなりありますので
「このクスリをのんでも治らない」とあきらめずにしばらく服用する必要があるでしょう。

適応は大うつ病相、 二次性うつ病, 広場恐怖を伴うパニック障害、
全般性不安障害、強迫障害、 摂食障害、 小児の遺尿症(イミプラミン)です。

現在日本で主に使用されている抗うつ剤を下に示します.

三環系
塩酸クロミプラミン(アナフラニール)、 塩酸イミプラミン(トフラニール)、塩酸ロフェプラミン(アンプリット)
アモキサピン(アモキサン)、 塩酸アミトリプチリン(トリプタノール)

四環系
塩酸マプロチリン(ルジオミール)、 塩酸ミアンセリン(テトラミド), マレイン酸セチプリン(テシプール),ミルタザピン(リフレックス)
非定型
スルピリド(ドグマチール)
1回50mgで消化性潰瘍、100mgで抑うつ状態 200mgで抗精神病薬として使用します。 高プロラクチン血症による生理不順や乳汁分泌、女性化乳房、食欲増強が副作用です。
トラゾドン(デジレル,レスリン)
トリアゾロピリジン由来の抗うつ剤。 構造的には三環系、 四環系抗うつ剤と類似性がなくアルプラゾラムと同様のトリアゾロ環構造を特徴とします。
中途覚醒の改善目的にも使用されます。 抗コリン作動性の副作用はみられず、 鎮静  起立性低血圧  めまい  頭痛  吐き気が主な副作用です。

SSRI
現在かなり多種類のSSRIが使用されるようになっていますが これらの構造に類似点はありません。
脳内セロトニン量の減少がうつにつながるという仮説がこれらセロトニン選択性再取り込み阻害作用を有するクスリの有効性を支持しています。

フルオキセチン(Prozac)
抗うつ剤のうちで最も副作用が少ないと言われています。 通常1日20mgが処方され 用量調整の必要がない 内科医も処方できる抗うつ剤です。
人生の考え方を変えるバラ色の薬として社会現象にもなりましたが、抗うつ効果は従来の薬に勝るものではなく、
投与初期の副作用として不安  焦燥感  睡眠障害があります。適応は抑うつ状態 肥満 神経性食思不振症 強迫性障害

フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
1日量50~300mg. 副作用は吐き気が主なものです。 焦燥感 食欲不振 睡眠障害もおこることがあります。 適応はうつ病と強迫性障害です。

パロキセチン(パキシル)
phenylpiperadine誘導体で, 強い選択的再取込み阻害作用を持つ薬です。重症のうつ病患者に対して、三環系抗うつ剤と同程度の力価を持ちます。
消化管症状(吐き気, 下痢, 便秘)がおもな副作用です。 適応はうつ病, パニック障害です。

エスシタロプラム(レクサプロ)
サートラリン(ジェイゾロフト)
ナフチルアミノ化合物でSSRIの中では副作用が少ないと言われており 標準的な抗うつ剤とほぼ同等の抗うつ作用があります。
適応は抑うつ状態(特に高齢者によく使われます。

SNRI
 セロトニンのみならず ノルエピネフリン再取り込み阻害作用を持つ抗うつ薬でフランスで開発され主にヨーロッパで使用されてきたものです。
 塩酸ミルナシプラン(トレドミン)
 デュロキセチン(サインバルタ)
 三環系あるいは四環系抗うつ薬に比べて即効性がみられ 口渇や便秘などの抗コリン作動性副作用は少ないです。 適応はうつ病, うつ状態


NaSSAはセロトニン・ノルアドレナリンを分泌させることで感情を正常化させます。
セロトニンやノルアドレナリンは「モノアミン系」と呼ばれる主に感情に関わる物質です。うつ病では、これらの物質が減ってしまう事で感情に異常を来たしていると考えられています。

モノアミンは神経の末端(神経終末)から分泌され、そのモノアミンは他の神経に作用することで、情報が伝えられていきます。
NaSSAは神経終末のモノアミンの分泌を促す作用がありますので 次の神経へ感情の情報をきちんと伝えやすくなるため、気分の改善が得られるというわけです。
セロトニンは、落ち込みや不安 ノルアドレナリンは、意欲や気力 ドーパミンは楽しみや快楽等の感情に関係していると考えられています。


 
【処方例】
最後に吉田メンタルクリニックでの典型的な処方例を・・・。

パニック障害

ドグマチール(100)2錠, メイラックス(1or2)2錠 分2 朝, 昼2時
デパス(1)1錠 頓 不安発作時

本疾患では不安発作もさることながら、予期不安(発作が起こるのではないかという漠然とした不安感)から日常行動範囲が狭まり
社会性の障害で困る患者さんが多くみられます。 これに対して上記処方が有効です。
デパス(ソラナックスでも可)は実際に発作が起こったとき、あるいは 脱感作行動療法を始める前の不安感を打ち消すときのみ 頓服で使用する点に注意してください。
短時間作用型高力価抗不安薬は依存性や耐性を形成しやすく、中には薬物依存に陥る症例がみられるからです。

うつ病
アナフラニール(10)2錠 分2 朝, 昼2時
テトラミド(10)1錠 分1 寝る前

双極性感情障害(そううつ)のうつ相では基本的に三環系抗うつ剤で対処します。
睡眠障害を伴うことが多いので 目覚めの気分改善 睡眠障害改善を狙って上記処方をします。
ただし高齢者では抗コリン作動性副作用が起きやすく(男性では前立腺肥大の可能性も高い)

テトラミドで副作用がみられた場合には 下記の処方に変更することがあります。

アンプリット(10)2錠 分2 朝,昼2時
メイラックス(2)1錠 分1 眠前

神経症性抑うつ状態、反応性(心的外傷後)抑うつ状態
ドグマチール(100)2錠, レキソタン(1)2錠 分2 朝,昼2時
ハルシオン(0.25)1錠, リスミー(2)1錠 分1 眠前
必要ならばテトラミド(10)を追加します。

性格と環境が合わずに悩み、常識では耐えられるような環境下でうつ症状が出現するものを神経症性抑うつ状態。
大多数の人間が耐えられないような環境下でうつ症状が出現するものを反応性抑うつ状態と称します。

うつ病と鑑別が難しい(本当に異なる病態なのか否かは論議の余地が存在する)のですが、
うつ病でははっきりとしたストレスの原因がみえにくく 症状も より重篤です。
いずれにせよ 本状態では薬物療法は二次的なもので、ストレスを避ける方法を話し合うことが治療の主体となります。
内科を「不眠」で受診するほとんどの症例はこれに該当すると思われます。



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