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和歌山市の心療内科・精神科クリニック。吉田メンタルクリニックです。

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〒641 0013 和歌山市 内原915

病名のおはなし

統合失調症(Schizophrenia)


 有病率 2.3(千対). 現在病名別入院患者で最も多い.
発症時期は30歳以前が大多数で思春期が多い. 病因は不明であるが, 遺伝負荷あり.
生物学的要因が心因より大きいと考えられる.
脳内のドーパミンあるいはセロトニンの代謝異常とする説が有力であるが, 定説には至っていない.

 最近外来受診する統合失調症患者の症状が軽症化し, 人格荒廃に至る重症例が少なくなっている.
従って統合失調症と明らかに診断を下せる症例が減少し, 精神科医でも診断名をつける場合に迷うことがある.
社会に行動や思考に関する絶対的基準がなくなり, 少しぐらいの「変わり者」ならば許容する風潮が統合失調症患者の消極的サポートになっている可能性も否定できない.

 あまりに症状や予後が多岐にわたるため, 統合失調症は一つの疾患単位ではなく, 症候群 (Complex) とするものもある.

【疾患概念】

ICD-10 : 思考と知覚の根本的で独特な歪曲と不適切なあるいは鈍麻した感情が特徴的.
意識の清明さと知的能力は通常保たれる.
極めて個人的な思考, 感覚, 行為が他者に知られたり共有されていると感じることがあり,
自然的あるいは超自然的な力が,奇妙な方法で患者の思考や行為に影響を及ぼす
という説明的な妄想が発展することがある.

幻聴を主体とする幻覚がみられ, 患者の行動や思考に注釈を加えることがある.
知覚障害もしばしばみられ, 色彩や音が過度に生々しく感じられたり,
日常的な物事の些細な特徴が対象全体や状況より重要なものにみえたりすることがある.

発病初期には困惑も多くみられ, 日常的な状況が患者だけに向けられるという確信に至ることがある.
特徴的な統合失調症性思考障害では, 正常な心的活動では抑制されているはずの末梢的で些細な特徴が前面にでてくる.
そのために思考は漠然として不可解であいまいなものとなり,
言葉で表現されても理解できないことがある. 思考の流れが途切れたりそれてしまうことがあり, 思考がなんらかの外的な作用により奪取されると感じることもある.


【分 類 (ICD-10)】

F20.0 妄想型統合失調症
最も多い subtype. 比較的固定した妄想が優勢で, 幻聴を主とする幻覚を伴う.
思考障害が急性状態で明らかになることはあるが, 典型的な妄覚は明瞭に陳述される.
陰性症状もしばしば現れるが, 臨床像を支配することはない.
発病は破瓜型や緊張型より遅い傾向にある.

F20.1 破瓜型統合失調症
感情の変化が顕著で, 妄覚は一時的, 断片的. 行動は一般に無責任で予測し難く,
わざとらしい(衒奇, mannerism). 気分は浅薄で不適切である.
思考は解体しており, 会話は一貫性を欠き, まとまりがない.
感情と意欲の障害が大きく, 妄覚は顕著ではない.
宗教, 哲学, 他の抽象的な主題に表面的, 衒奇的に没頭して, 患者の思考の流れを追うことが困難になることがある.
通常15〜25歳に発病し, 陰性症状が急速に進行して予後不良となりがちである.

F20.2 緊張型統合失調症
顕著な精神運動性障害が主病状.
昏迷, 理由不明の興奮, 保持, 拒絶症, 硬直, 蝋屈症, 命令自動症のうち1つ以上の症状が存在すること.
理由は不明であるが, 先進諸国ではこの subtype をみつことは希になった.

F20.3 鑑別不能型統合失調症

F20.4 統合失調症後抑うつ

F20.5 残遺型統合失調症

F20.6 単純型統合失調症

【症 状】

一般症状
a. 思考障害
連合弛緩 : 思考単位間のつながりがなくなる. これがひどくなると, 単語の羅列になり, 言葉のサラダと表現される状態になる
思考途絶 : 今まで考えていたことが突然中断してしまう
妄想 : 現実にはありえない思考にとらわれ, 訂正がきかない. 心理学的に了解できない一次妄想と, ある程度原因や構築過程が納得できる二次妄想に分類される.
被害妄想〜迫害, 関係, 注察, 追跡, 被毒 
誇大妄想〜宗教的, 予言者, 発明, 血統, 恋愛(荒唐無稽, グロテスクな内容)

b. 感情障害
冷淡, 薄皮一枚隔てた感じ, 等価性, 感情の平板化

c. 意欲, 行動障害
生活意欲の喪失, 独語, 空笑

d. 自我障害

e. 人格障害

f. 幻覚
幻聴, 考想伝播(自分の考えが他人に伝わってしまう), 異常身体知覚

K. Schneider の一級症状
1. 考想化声 : 考えが口に出さなくても声となって表現されているように思う
2. 話しかけと応答形式の幻聴
3. 自己の行為に随伴して口出しする幻聴
4. 身体への影響体験
5. 思考奪取 : 他人に考えを盗まれてしまう
6. 考想伝播

7. 妄想知覚
8. 作為体験 : 他人に操られている

陽性症状と陰性症状
表面に出現する異常精神症状(幻聴, 妄想)を陽性症状 (positive symptoms or productive symptoms),
根底にある欠陥症状 (自閉, 意欲低下, 感情鈍麻)を陰性症状 (negative symptoms) と称する.
長い病歴のうちに陰性症状が主体となり, 家庭にとじこもってしまう症例が多い.

【治 療】
向精神病薬
この病気にはまずクスリ, chlorpromazine (コントミン, ウィンタミン) が最初に開発されたものである.

標的症状 : 主症状にあわせたクスリの選択

精神運動興奮 〜 levomepromazine (ヒルナミン) , zotepine(ロドピン)
幻聴, 妄想 〜 haloperidol (セレネース), bromperidol (インプロメン)
効力持続性注射薬剤 : 服薬を嫌がる患者さんに用いられる.
効果持続は2週間から4週間 〜 フルフェナジンデカン酸エステル (フルデカシン), haloperidol decanoate (ハロマンス),

副作用 : パーキンソン症状, 過鎮静, アカシジア, 自律神経失調症状(口渇, 鼻閉, 血圧低下, 便秘), 肝障害, 悪性症候群

理想的な薬剤 : 鎮静作用が少なく陽性症状が抑制される

近年, 有害作用が少なく, 認知の歪みを正して陰性症状を改善させるとされる
非定型抗精神病薬(あるいはSDA)が第一選択薬となっている
risperidone(リスパダール), quetiapine fumarate(セロクエル), perospirone hydrochloride hydrate(ルーラン),  olanzapine(ジプレキサ),アリピプラゾール(エビリファイ),ブロナンセリン(ロナセン)



電気ショック療法
抗精神病薬に反応しない症状(衝動行為, 拒食, 拒薬)が適応となる.
一時残酷な療法として使用が制限されていたが未だに有効な治療方の一つではある.
最低3回を1クールとし, 麻酔下で行う場合は効力がやや落ちる.